2010年11月15日

明日への不安:同性愛カップルの課題/下 「内面サポート機関必要」 /熊本

明日への不安:同性愛カップルの課題/下 「内面サポート機関必要」 /熊本
2010年11月12日 毎日jp

◇法律相談受ける中で実感

 熊本市新大江の行政書士法人ウィズネスは5年前、セクシュアルマイノリティー(性的少数派)を対象にした専門サイトを開設した。城本亜弥行政書士が性同一性障害の友人から「法律的な相談をする所がない」と聞いたのがきっかけだった。

 相談は財産関係が多い。結婚していれば相続は自然にできるが、同性のパートナーには権利がない。特に不動産がある場合「一緒に生活してきた場をパートナーに残したい」と相談してくるケースが多いという。

 財産相続のためには大きく養子縁組と遺言作成という方法がある。養子縁組は戸籍上も家族になれるので法律的な権利を明確にするには最善のやり方といえる。相手が病気や事故で病院に搬送された場合、相手の家族と関係が悪いとそばにいられないこともある。養子縁組すれば「家族」として権利を主張できる。「一方で名字が変わることによる影響が考えられることや、将来的に同性婚が認められた場合、家族同士で結婚ができるのかという問題が生じる可能性がある」と、城本行政書士は指摘する。

 公正証書の遺言作成は早ければ1週間程度でできる。パートナーの死後、実際に手続きをする遺言の執行者を行政書士や弁護士らの第三者に指定することで親族とトラブルが起きた場合も対応してもらえる。「ただ、あくまで死後の話であるためパートナーが病院に搬送された場合、治療方針など自分の主張ができない可能性は残る」という。

 ウィズネスには年間50〜100件、メールを中心に問い合わせがある。20〜50代と幅広いが実際に手続きに結びつくのは40代以降が中心。紛争事案や裁判所手続など弁護士資格が必要な業務は、提携している弁護士事務所などに紹介している。

 城本行政書士は「相談を受ける中で自分が何者であるか分からないなど、内面を悩んでいる人が多いことを実感した。自分たちは法律面でアドバイスをしていくこともできるが、内面をサポートするような機関が行政民間ともに充実していく必要がある」と話す。行政書士法人ウィズネスの連絡先とサイトは096・283・6000、http://www.sexual‐minority.net。【遠山和宏】
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明日への不安:同性愛カップルの課題/中 「制度変わる実感ない」 /熊本

明日への不安:同性愛カップルの課題/中 「制度変わる実感ない」 /熊本
2010年11月11日 毎日jp

 「性同一性障害に対する世間の認識は変わったかもしれないけれど、(レズ)ビアンに対してはほとんど変わっていない」

 佳美さん(36)と清子さん(33)=いずれも仮名=は約3年半前に交際を始め、直後から熊本市内の集合住宅で同居している。「もし制度で認められていれば結婚しているかもしれない」。清子さんは同性愛であることを親に打ち明けているが佳美さんは言っていない。一人っ子のため「子孫が残らないと親にがっかりされるのが怖い」という。

 「彼氏いないの」「合コンに行こうよ」「結婚しないの」−−。周りの友人たちは気軽に声を掛けてくる。「一人が楽しいから」などと答えるが、誘いは煩わしい。「彼女がいる」ときっぱり言えたら楽だと思う。でも変な目で見られるのが怖くて周囲の多くの人には話していない。佳美さんは一時彼女を彼氏に置き換えて周りと話していたが、疲れてやめた。

 佳美さんが印象に残っていることがある。2年前にあった清子さんの父の葬儀。結婚していれば義理の父親にあたり参列するのは当たり前だが、親族からは「来てくれてありがとう」と言われた。「熱心な友達という感じで見られていた。認められていない気がして切なかった」と振り返る。割り切れない気持ちのまま途中で会場を後にした。

 2人が死と向き合う場面となれば事態はさらに深刻だ。日ごろから将来のことを意識しているわけではないが考えると不安になる。例えばパートナーが突然事故や病気で倒れたら−−。事故があれば警察は家族に連絡にする。だが法的に家族でないパートナーには連絡が来るかどうか分からない。特に佳美さんは親に清子さんとの関係を話していないため何かあった場合、清子さんに連絡がくるという確証はない。

 佳美さんは「周囲が同性愛を認知し、理解してくれれば財産相続など将来の不安を取り除いてくれるようなパートナーとしての権利を保障する制度や法律もできるかもしれない」と話す。「ただ、現実にはテレビでも取り上げられないし、どこの政党もマニフェストに書いてない。変わるかもしれないという実感はない」と不安を語る。【遠山和宏】
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明日への不安:同性愛カップルの課題/上 将来の安心へ遺言作成 /熊本

明日への不安:同性愛カップルの課題/上 将来の安心へ遺言作成 /熊本
2010年11月10日 毎日jp

◇パートナーに財産相続

 「この中に遺言が入っているんです」。東京都郊外に住む50代男性は、地震など緊急時に持ち出すリュックサックを見せた。遺言は、同居する8歳年上の男性パートナーと5年前に作ったものだ。どちらかが死んだ後に遺産を相続するという内容が書かれている。

 2人は同性愛の関係にある。50代男性は中学生のころから同性に好意があることを意識し始めた。25歳の時、親に「女性に興味がないから結婚しない」と話すと「おかしい。病院に行け」と言われた。今のパートナーは初めての「彼氏」で、20代後半から交際を始めた。一緒に住もうと賃貸マンションを探したが、男2人に対する世間の視線は冷たい。ようやく理解がある大家を見つけ住み始めたが、半年後に大家が病死。大家の妻は2人の居住に否定的で転居を余儀なくされた。

 「新たな部屋は見つからず近い距離で別々にマンションを借り、食事などは互いの住居を行き来する生活を約20年続けた」

 02年に相手男性が退職し、計2部屋分の家賃を負担するのが経済的に厳しくなった。03年にマンションを共同名義で購入した。「2人に法的な関係がないままでは、どちらかが亡くなった場合所有権が親族に渡ってしまう」。残された相手はどうなるのか、不透明な将来に思いを巡らす。

 財産を守るには「公正証書遺言」を作成する方法があると知っていた。しかし、やり方がよく分からなかった。マンション購入の半年後にセクシュアルマイノリティー(性的少数派)向けサイトを開設していた熊本市の行政書士法人ウィズネスのホームページを見つけた。メールで相談を始め、同市内のホテルで行政書士と顔を合わせて話し合った。05年12月に公正証書ができた。「将来の安心が買えた」とほっとした。

 ただ、遺言が指定できるのはあくまで死んだ後に限られる。病気や事故などでパートナーが入院した時、病室に入ったり、治療の意思を表明したりできるかは依然不透明だ。

 2人で養子縁組し、正式に「家族」になることを検討している。「制度が変わるのは難しい。いつ病室に運ばれたり死んだりするか分からない。その時どうなるかが自分たちにとっては大事だ」。男性の不安は尽きない。

  ◇  ◇

 通常の結婚なら当たり前に保障される遺産相続や医療方針決定などの権利が、同性パートナーには認められていない。当事者たちは年を重ねるごとに将来への不安を深めている。何を悩みどう生きていくのか。同性愛者や支援者の声を聞いた。【遠山和宏】
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